葬儀やお通夜の帰り際に、会葬御礼品と共に小さな手提げ袋に入れられて参列者全員に手渡される一枚のカードや奉書紙に印刷された書状。これが「会葬礼状(かいそうれいじょう)」です。後日、忌明けなどに送られる香典返しに添えられた挨拶状とは、その目的と渡すタイミングが明確に異なります。会葬礼状の最も大きな目的は、その名の通り「会葬」、すなわち葬儀にわざわざ足を運んでくださったという行為そのものに対する感謝の気持ちを、その場で直接伝えることにあります。したがってこの礼状は香典を持参したかどうかに関わらず、弔問に訪れたすべての人にお渡しするのが基本的なマナーです。深い悲しみの中、またご多忙の中、故人のために時間を割いて駆けつけてくれたというその温かい弔意に対して、ご遺族からのささやかでしかし誠実な「ありがとう」の気持ちが、この一枚の紙に込められているのです。会葬礼状の文面は一般的に定型化されています。まず冒頭に故人の俗名を記し、「亡父 〇〇 儀 葬儀に際しましては」と始めます。続いて「ご多忙中にもかかわらず ご会葬を賜り厚く御礼申し上げます」と参列への感謝を述べます。「おかげをもちまして 葬儀も滞りなく相済ませることができました」と儀式の無事終了を取り急ぎ報告します。そして「生前中はひとかたならぬご厚情を賜りましたこと 深く感謝申し上げます」と故人に代わって生前の御礼を伝えます。最後に「早速拝眉の上御礼申し上げるべきところ 略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます」と書中での失礼を詫びる言葉で締めくくります。日付は葬儀当日の日付が、差出人として喪主の氏名と親族一同の意向を示す「親族一同」という言葉が印刷されているのが一般的です。この会葬礼状はいわばご遺族からの最初の、そして最も直接的な感謝のメッセージなのです。