五七日法要とは、閻魔様の審判に臨む日
故人様が亡くなられてから三十五日目に行われる忌日法要、それが「五七日(ごしちにち、いつなのか)」です。この法要は、初七日から始まる七日ごとの追善供養の中でも、特に重要な節目の一つとされています。なぜなら、この日は、故人の魂が、あの世の十人の王(十王)の中で最も恐ろしく、そして最も中心的な存在である「閻魔大王(えんまだいおう)」による、最終審判とも言える、厳しい裁きを受ける日である、と信じられているからです。仏教の教えでは、故人の魂は四十九日間、この世とあの世の間(中陰)を旅しながら、七日ごとに生前の行いを審判されます。初七日から四七日までの審判は、いわば予審のようなものであり、この五七日に行われる閻魔大王の審判が、その後の生まれ変わり先を決定づける、最も重要な裁判となるのです。閻魔大王は、「浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)」という、生前の行いの全てを、善行も悪行も、余すところなく映し出す、不思議な鏡を持っていると言われています。この鏡の前では、いかなる嘘もごまかしも通用しません。故人は、自らの人生の全てと、真正面から向き合わなければならないのです。この、故人にとって最大の正念場となる日に、残されたご遺族が、この世で法要を営み、僧侶にお経をあげてもらい、善行を積む(追善供養)こと。その功徳が、故人の魂へと届けられ、閻魔大王の裁きを、少しでも軽くするための、力強い「弁護」となると信じられています。いわば、ご遺族は、故人の弁護人として、この世から、最大限のエールを送るのです。五七日法要は、単なる儀式ではありません。それは、故人の魂の運命を左右する、極めて重要なターニングポイントであり、残された家族の祈りの力が、最も必要とされる、愛と連帯の儀式なのです。