葬儀でいただいた香典に対して後日お返し(返礼品)を贈る「香典返し」。その品物に必ず添えなければならないのが「忌明け(きあけ)の挨拶状」です。この挨拶状は単に品物を送ったことを知らせるための送り状ではありません。そこにはいくつかの非常に重要な役割と意味が込められています。その最大の役割は「忌明けを無事に迎えたことの報告」です。仏教では故人が亡くなられてから四十九日間を「中陰」または「忌中」と呼び、ご遺族は喪に服し身を慎む期間とされています。そして四十九日の法要を終えることでこの「忌」が明け、ご遺族は再び通常の社会生活へと復帰します。忌明けの挨拶状は、この一連の儀式が滞りなく終了し故人が無事に成仏したことを、葬儀でお世話になった方々へ正式に報告するための大切な通知なのです。それは心配してくださった方々へ安心を届けるための温かいメッセージでもあります。この挨拶状の文面は、基本的なお礼状の構成にこの「忌明けの報告」の要素を加える形となります。具体的には「さて 先般 亡父 〇〇 儀 葬儀の際は ご鄭重なるご弔慰を賜り 誠にありがとうございました」とまず葬儀への御礼を述べます。続いて「おかげさまをもちまして さる〇月〇日 滞りなく四十九日(または満中陰)の法要を相営みました」と忌明けの報告を明確に記します。そして「つきましては 供養のしるしまでに 心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます」と香典返しを送った旨を伝え、書中での失礼を詫びる言葉で締めくくります。宗教・宗派によって用いる言葉が異なる点にも注意が必要です。例えば神道では「五十日祭」、キリスト教(カトリック)では「追悼ミサ」、(プロテスタント)では「召天記念式」といったそれぞれの儀式の名称を用います。この丁寧な報告と感謝の書状が、故人が繋いでくれたご縁を未来へと繋ぐ大切な架け橋となるのです。
香典返しに添える忌明けの挨拶状