母が亡くなったとき、私たち兄妹は迷わず近親者のみでの葬儀を選びました。母は生前、華やかな場所よりも家族と過ごす静かな時間を愛する人だったからです。実際に執り行ってみて感じたのは、これまでに参列したどの葬儀よりも、母を身近に感じられたということでした。参列者は私たち親族12名だけ。式場は小さめの個室のような空間で、祭壇には母が好きだった野の花をたくさん飾ってもらいました。一般葬であれば、受付の設営や会葬御礼の準備、弔辞の依頼など、やらなければならない事務作業が山積みですが、近親者のみの葬儀ではそうした負担がほとんどありません。その分、私たちは母の遺影を囲んで、子供の頃の失敗談や母が作ってくれた料理の思い出を、時間を忘れて語り合うことができました。誰に気兼ねすることもなく、声を上げて泣き、笑うことができたのは、気心の知れた身内だけだったからこそだと思います。また、費用の面でも、見栄のための過剰な装飾を省き、その分を母への最後の手向けとしての豪華な食事や、質の高い棺に充てることができました。1つだけ心配だったのは、母の友人たちへの対応でしたが、葬儀後に丁寧な手紙を添えて事後報告をしたところ、多くの方から「あなたたちらしい、良いお別れをしたね」と温かい言葉をいただきました。中には自宅にお参りに来たいとおっしゃる方もいましたが、お一人ずつ個別に対応することで、かえって深いお話を伺うことができ、母の知らなかった一面を知る機会にもなりました。近親者のみという選択は、世間体よりも「心」を重視する勇気が必要ですが、その結果得られる納得感は何物にも代えがたいものです。葬儀とは、残された者が前を向いて生きていくための区切りの儀式です。その儀式を、誰に何を言われるかを気にせず、自分たちの手で作り上げたという実感は、大きな心の支えになりました。形式に縛られない、この密やかなお別れは、私たち家族にとって最高に贅沢で、そして最も誠実な供養だったと確信しています。これから葬儀を控えている方には、規模の大小ではなく、誰とどのような時間を過ごしたいかを最優先に考えてほしいと願っています。