百貨店の紳士服・婦人服売り場で長年フォーマルウェアの担当をしていると、お客様から最も多く寄せられる切実な相談の1つが「どの黒ストッキングを選べば失礼になりませんか」という問いです。特に葬儀に初めて参列されるお若い方や、久々に葬儀に出席される年配の方まで、年齢を問わず多くの方が不安を抱えていらっしゃいます。私はいつも、お客様に3つのポイントを基準に選ぶようお話ししています。1番目はデニール数、2番目は着圧、3番目は予備の確保です。まずデニール数ですが、売り場では20デニールから25デニールを強くお勧めしています。この厚さは、喪服の生地がどのような素材であっても調和しやすく、肌を最も美しく、かつ厳かに見せてくれるからです。最近のトレンドとして、真っ黒すぎない「シアーブラック」という色味が人気ですが、葬儀用としては青みや赤みに寄らない、ニュートラルな黒を選ぶのが失敗しないコツです。2番目の着圧についてですが、葬儀は受付から焼香、出棺まで、想像以上に長時間立ち続けることが多い儀式です。そのため、足首やふくらはぎに適度な圧力をかけるタイプを選ぶと、夕方のむくみや疲れを軽減でき、最後まで凛とした姿勢を保つことができます。ただし、着圧が強すぎると着脱に時間がかかり、お手洗いや着替えの際に不便を感じることもあるため、中程度の圧力のものをご提案しています。3番目の予備の確保は、百貨店員として最も強調したい点です。1足数千円する高級なストッキングであっても、指先のひっかけ1つで台無しになります。そのため、購入時には必ず同じものを2足、できれば3足まとめてお買い求めいただくようお伝えしています。同じ商品を揃えておくことで、片足ずつ伝線した際に組み合わせて使うことも可能です。また、最近では「マタニティ用」の黒ストッキングを探しに来られる方も増えています。妊娠中の方は腹部が冷えやすく、通常のストッキングでは圧迫感が強いため、専用のゆとりある設計の黒ストッキングを選ぶことが母体の安全のためにも重要です。私たち販売員は、単に商品を売るだけでなく、お客様が大切な方との最後のお別れを、身だしなみの不安なく過ごせるようお手伝いすることを使命と考えています。百貨店の店頭で丁寧に選んだ1足は、お客様の自信となり、故人への誠実な想いを届けるための確かな土台となるはずです。